【築地新聞】築地今昔ものがたり

築地今昔ものがたり

世界トップクラスの水産物取引量を誇る「築地市場」は、昔「魚河岸」呼ばれていました。そんな築地市場は1935年に開設されて以来、首都圏に住む人々の食生活を支え、すでに80年以上経過しています。ここからは、「築地市場」が歩んできた歴史について解説していきます。

魚河岸発祥の記念碑

築地市場のルーツは、東京都中央区日本橋にあります。「魚市場発祥の記念碑」は今もなお日本橋に存在しており、「ことごとく鮮魚の市倉なり」と碑文に刻みこまれています。これは「新鮮な魚介類を漁場から運び、この近辺で日夜市を立てて賑わっていた」という意味です。

江戸時代初期、江戸城の主である徳川家康は城内の台所を賄うために、大阪から漁師たちを呼び寄せ、江戸湾内における漁業の権利を特別に与えました。漁師たちはマグロやタイなどの魚介類を幕府に納め、余った魚介類を日本橋で売るようになったのです。魚介類を売っている市場の隣で海苔やかつお節、練り物などを商う店がどんどん増えていき、次第には諸国からの魚介類も集まるようになりました。これが「魚河岸」の始まりといわれています。

江戸時代の魚市場では、「①問屋が店を構える」「②問屋が仕入先の生産地と結び付く」といった独自組織を作って展開していました。その際の取引の流れは以下の通りです。

  1. 問屋が魚介類などの商品を荷主から買い取る。
  2. 買い取った商品の価格を確定させないまま問屋は仲買人に渡す。
  3. 受け取った仲買人はその商品を小売商に売却させる。
  4. 市場が終わった後、仲買人は問屋に集まり、その日の売上結果を発表させる。
  5. その話し合いによって商品の価格をそれぞれ確定させる。

「商品を売ってから卸売の価格を初めて決める」というやり方は現代ではありえませんが、当時は上記のような流れで取引が頻繁に行われていました。

江戸時代の魚河岸
江戸時代に行われていた取引の様子

明治時代、市場は近代化していきました。問屋や仲買人は組合を作り、「日本橋」「千住」「芝金杉」「新場」の4ヶ所に当時の魚市場はまとめられました。

しかし、都市の人口増加に伴い、業者数や取扱量が増えていったため、取引が乱れ不衛生な状況に陥りました。このような状況に対して、人々は不満を漏らすようになり、次第に「公設の中央卸売市場を作ってほしい」と人々は願うようになったのです。

そこで、大正12年3月、近代的な市場を整備するべく「中央卸売市場法」が制定されました。東京が市場を指導・運営し、衛生的かつ公正な取引による品質と価格の安定を目指したのです。

明治時代の魚河岸
芝浦の仮設市場

しかし、大正12年9月東京を関東大震災が直撃したため、民営市場は多大なる被害を受けました。日本橋の魚市場も壊滅してしまったので、築地の海軍省所有地を借り受け、中央卸売市場開設までの暫定市場として「臨時の魚市場」を開設しました。これが築地市場の始まりとなったのです。

昭和10年2月、約23万㎡の東京都中央卸売市場が築地に開設されました。東京都中央卸売市場へ集まる食料品は、隅田川岸壁の桟橋から船で運ばれてくる、もしくは旧汐留駅から引き込線を通して貨物で運ばれてきました。そのため、築地に扇状の建物が建てられたのです。東京都中央卸売市場は迅速、かつ公正な取引を展開し、公の場で取引結果を発表して価格安定を実現し、首都圏の人々の生活を支える力となったのです。


築地市場開設当時の写真

太平洋戦争が始まった昭和16年頃、食料品は「配給統制」となりました。戦後も配給統制は続いたため、長い間市場本来の役割を果たすことができませんでした。昭和25年以降は市場の働きが徐々に回復していき、入荷量増加に伴い人々の食生活も安定へと向かいました。

昭和37年、東京の人口が1,000万人を超えた頃、漁業技術の発達や冷凍技術の進歩によって新鮮な魚介類が大量に水揚げされるようになりました。その上、野菜や果物に関しても農協などの出荷団体の組織が整備されたため、生産規模も拡大していきました。さらに、トラックで輸送できる環境も整ってきたため、全国各地から市場へ商品が集まるようになったのです。

このようにして、東京都中央卸売市場は首都圏の人々の食生活を賄う食料品などにおける流通拠点になっていきました。その中でも、特に築地市場は1日平均3,350トンの魚介類や野菜などが入荷され、約21億円の取引が行われるなど、世界トップラスの魚市場に発展したのです。

平成24年度の築地市場

首都圏在住の人々の食文化を支えてきた「築地市場」は食料品流通の中核を担う拠点として、平成24年度、江東区豊洲地区に新市場として生まれ変わりました。築地市場の中には仲卸業者が店をそれぞれ構えており、飲食店や小売業の人が自由に購入することができます。築地市場で店を構える店舗は早朝5時~9時頃まで営業しています。