おさかな普及センター資料館
さかなの知識あれこれ
たけのこめばる No.8
「たけのこめばる」とは何か。

  1. タケノコメバル(標準和名)のこと。築地魚市場への入荷はまれ。
  2. (築地魚市場では)筍(たけのこ)が出回る時期のウスメバルを指す。なお、築地魚市場では通常、ウスメバルを「めばる、赤めばる」、メバルを「黒めばる」と呼んでいる。

”たけのこめばる”と呼ばれる魚
標準和名 地域
キツネメバル 下関
クロソイ 下関
タケノコメバル 大阪・兵庫・七尾・宇部・下関・愛媛
トゴットメバル 赤穂
メバル 松山・愛媛

  1. 江戸時代中期の「食療正要」(松岡玄達、1769)の”メバル、モウオ”のところには、「備前の人 小なる者を呼んで筍眼張(タケノコメバル)と為す 班文有りて 斑竹筍皮の如し」とあり、タケノコメバルという名前は筍の皮の模様に由来するものと思われる。ただこの筍は、今日もっともよく食べられているモウソウチクではなく、マダケのものと考えられる。マダケの筍の皮には、黄褐色の地に焦茶色のまだら模様があり、一様な褐色であるモウソウチクのものに比べてタケノコメバルの色彩によく似ているからである。さらに当時はマダケの筍が一般的で、モウソウチクは中国から日本に入ってきたばかりであったことも、このことを裏付ける。
    味については、田中茂穂博士(1955)が、「大阪方面では筍の現出する時分に頗る美味となるともし、また美味の時には筍よりも美味だと言っている」と解説している。
    近年、産地の1つである瀬戸内海では数が減少している(横川、1997)。
  2. 阿部宗明博士(名誉館長)(1987)によれば、「東京で”たけのこめばる”と呼んでいるのはウスメバルのこと」である。
    いつ頃から東京でウスメバルのことを”たけのこめばる”と呼ぶようになったかは今のところ不明であるが、この”たけのこ”はマダケの筍の模様ではなく(上記の図と回答の1参照)、モウソウチクの筍の時期と関係しているように思われる。モウソウチクの筍の時期は3〜4月であるが、マダケの場合は6月頃である。ウスメバルの産卵期は、3〜6月頃で、マダケの筍が出回る6月には身も痩せていて旬とはいえないからである。

阿部宗明.1987.材料料理大辞典.学研,東京.
田中茂穂・阿部宗明.1955.図説有用魚類千種.森北出版,東京.
日本魚類学会(編).1981.日本産魚名大辞典.三省堂,東京.
松岡玄達.1769.食療正要.
横川浩治.1997.タケノコメバル.p.28.瀬戸内海水産開発協議会(編).瀬戸内海のさかな.
青葉 高ほか(編).1995.タケノコ.p.214.食材図典.小学館,東京

(注:提供資料から一部アレンジ)