おさかな普及センター資料館
さかなの知識あれこれ
“あんこう” No.21
輸入される「あんこう」は日本のアンコウと同じ種類か。/アンコウとキアンコウの識別点

日本で食用にする「あんこう」にはアンコウとキアンコウがある。輸入されるものには北米大西洋岸のアメリカキアンコウ、ヨーロッパのニシアンコウなどがある。中国のものは日本のキアンコウと同種。アンコウとキアンコウは味に違いがあるとして区別する地方もあるが、築地では区別されない。また輸入の「あんきも」も場所により味が違うといわれるが詳細は不明。

 「あんこう」はアンコウ目アンコウ科のアンコウ属とキアンコウ属の魚の総称である。アンコウ属の魚は世界に1種で北海道から東南アジア、アフリカまで分布するアンコウのみが含まれる。キアンコウ属は世界に8種おり、そのうち日本にはキアンコウ1種が分布する。なおアンコウ科には、ほかに2属あり、日本にはヒメアンコウ属の5種(世界で13種)が分布するが、大きくならず量的にも少ないのでほとんど利用されない。
 アンコウとキアンコウは外見上よく似ている。主な違いは胸鰭(むなびれ)上方にある棘の形(アンコウ:枝別れする、キアンコウ:枝別れしない)、口内の模様(アンコウ:黒地に白点、かすり模様)、臀鰭(しりびれ)の鰭条(ひれすじ)数(5〜7、8〜9)などである。
 アンコウは北海道南部から東シナ海、フィリピン、アフリカまで広く分布する。キアンコウは北海道から黄海、東シナ海の北部に分布する。日本近海での両種の分布域は重なっているが、アンコウはキアンコウに比べ、水温が高く深い場所を好む傾向がある。
 国内のアンコウ類の主な産地は青森県、北海道、新潟県、福岡県、山口県、底曳網や刺網で漁獲される。中国や韓国からはキアンコウの鮮魚が、アメリカ、スペイン、フランスなどからはアメリカキアンコウやニシアンコウのむき身や肝臓が輸入されている。
 江戸時代まで、アンコウとキアンコウは区別されずに鮟鱇、華臍魚、琵琶魚などと表記された。明治時代以降、日本の「あんこう」に2種あることがわかったが、市場などでは今日でもほとんど区別されていない。

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(注:提供資料から一部アレンジ)