おさかな普及センター資料館
さかなの知識あれこれ
縁側(えんがわ) No.24
「縁側」はどの部分のことか/ヒラメ以外の魚でも「縁側」と呼ぶのか

「縁側」とはカレイ類(ヒラメ・マコガレイなど)の背鰭(せびれ)と臀鰭(しりびれ)の軟条(なんじょう、ひれすじ)を動かす筋肉の一般的な名称。ふつう「縁側」というと、ヒラメの「縁側」を指すことが多い。

 魚類の背鰭と臀鰭を動かす筋肉には、起立筋・下制筋・傾斜筋の3種がある。起立筋は、各鰭条の基部の前縁から神経棘・血管棘あるいは中央隔壁へ向かい、鰭条を立てる。下制筋は、各鰭条の基部の後縁から神経棘・血管棘あるいは中央隔壁へ向かい、鰭条を倒す。傾斜筋は、各鰭条の基底両側面部の前縁から外皮内側に向かって並び、鰭条を左右に倒す働きをする。背鰭や臀鰭をよく動かす魚類では、これらの筋肉がよく発達する。一般的に、「ヒラメの縁側」はこれら一連の筋肉を指すと説明されている。
 しかし、実際には「これら一連の筋肉」、すなわち3種の筋肉を「縁側」として食べているわけではないようである。ヒラメやマコガレイでは、「縁側」はふつう刺身と一緒に供されるが、その捌き方(おろし方、五枚おろし)をみると、縁側は剥いでいるようにみえる。剥がれたものは傾斜筋で、起立筋と下制筋は鰭条や担鰭骨などに固着したままである。したがって、少なくとも刺身とともに食べる「縁側」は、背鰭と臀鰭の傾斜筋ということになる。
 よく知られているように、「縁側」には硬たんぱく質であるコレーゲンが多く、コリコリとした独特の歯ごたえがある。また、脂質含量も多く、極めて美味である。「縁側」を煮ると柔らかくなるのはコラーゲンがゼラチンに変わったためである。
 寿司店によっては、ネタにヒラメやマコガレイがなくても、「縁側」があることがある。多くの場合、カラスガレイ(カレイ科)のものである。北日本でもとれるが、市場に出回っているものは北部北太平洋や北部北大西洋でとられ、アメリカ・カナダ・アイスランドなどから輸入されたものである。最近は、アブラガレイ(カレイ科、北部北大西洋産、アメリカなどから輸入)の「縁側」も「縁側」として利用されている。

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(注:提供資料から一部アレンジ)